あの時「よくやった」と自分を褒めた記憶をたどり、自己肯定感を育む方法
私たちは日々の生活の中で、様々な出来事を経験しています。時にはうまくいかないことや、自信を失いそうになる瞬間に直面することもあるかもしれません。しかし、私たちの過去には必ず、自分自身で「あの時はよくやったな」「自分を褒めてあげたいな」と感じた温かい記憶が存在しています。そうした記憶こそが、今の自分を支え、未来への一歩を踏み出すための揺るぎない力となるのです。
なぜ「自分を褒めた記憶」が大切なのか
自己肯定感は、幸福感や挑戦する意欲、困難を乗り越える力に深く関わっています。自己肯定感は、他者からの評価だけでなく、自分自身が自分をどのように見ているかによって大きく左右されます。過去に自分が「よくやった」と感じた記憶を思い出すことは、他ならぬ自分自身が、その時の自分を認め、価値を置いた証拠です。この「自己承認の記憶」をたどることは、自分の中に眠る肯定的な評価を再発見し、自己肯定感を内側から高めることに繋がります。
「よくやった」記憶の見つけ方
特別な成功体験である必要はありません。自分を「よくやった」と褒めたくなる瞬間は、意外と日常の中に潜んでいます。
- 小さな目標を達成した時: 「今日のToDoリストを全て片付けた」「苦手な人に挨拶ができた」など。
- 困難な状況を乗り越えた時: 「体調が優れない中でも家事をこなした」「人間関係のトラブルを冷静に対処した」など。
- 誰かの役に立てた時: 「困っている友人の話を聞いてあげられた」「家族のために何かをしてあげられた」など。
- 自分自身を大切にした時: 「疲れている時に無理せず休息をとった」「自分の好きなことに時間を割いた」など。
- 新しいことに挑戦した時: 「初めての場所に一人で行ってみた」「興味のある分野の勉強を始めた」など。
これらの瞬間を思い出すことから始めてみましょう。完璧である必要はありません。あなたが少しでも「あれは頑張ったな」と感じた出来事があれば、それが「よくやった」記憶の手がかりとなります。
記憶を自己肯定感と活力に変える実践ワーク
過去の「よくやった」記憶を見つけたら、それを今の自分に活かすための具体的なステップを踏んでみましょう。
ワーク1:記憶の描写と掘り下げ
紙とペン、またはPCやスマホのメモ機能を用意してください。 1. 見つけた「よくやった」記憶を一つ選び、その時の状況を具体的に書き出します。いつ、どこで、誰と、何をしたのか、五感で感じたこと(景色、音、匂い、触感など)も含めて詳細に描写します。 2. その時、自分がどのように感じたか、どのような感情が湧き上がったかを書き出します。「安堵した」「達成感があった」「少し誇らしかった」「ホッとした」など、率直な気持ちを表現します。 3. そして、なぜあなたは「よくやった」と自分自身を褒めたくなったのか、その理由を深掘りして書き出します。「苦手なことに挑戦したから」「大変だったけど諦めなかったから」「誰かの力になれたから」「自分を律することができたから」など、あなたの内なる評価の根拠を探ります。
このワークを通じて、あなたは過去の自分がどのような行動や状況を価値あるものとして捉え、自分自身を認めていたのかを明確に理解することができます。これは、あなたの隠れた強みや価値観を再発見するプロセスでもあります。
ワーク2:記憶からの「自己承認エキス」抽出
ワーク1で書き出した内容を見返します。特に「なぜよくやったと褒めたのか」の部分に注目してください。そこから、当時のあなたが自分に与えた「承認の言葉」や「評価のポイント」を抽出します。 例えば、
- 「大変だったけど諦めなかったから」→ 「粘り強さ」「継続する力」を自分は認めている
- 「苦手なことに挑戦したから」→ 「勇気」「新しい一歩を踏み出す力」を自分は評価している
- 「誰かの力になれたから」→ 「貢献」「他者への思いやり」を自分は価値だと感じている
このように抽出した言葉やポイントは、あなたが自分自身のどのような側面を大切にし、誇りに思えるかを示しています。これらは、揺るぎない自己肯定感を築くための基盤となる要素です。
ワーク3:現在の自分への応用
ワーク2で抽出した「自己承認エキス」を、現在の自分に当てはめてみます。 * 今の自分に、過去の自分が認めた「粘り強さ」や「勇気」はあるだろうか。きっと、形は違えど存在しているはずです。 * 今日の小さな「できた」や、乗り越えた困難に対して、過去の自分が自分を褒めた時と同じような視点で、今の自分を褒めてみましょう。 * 朝起きた時や寝る前に、ワーク2で抽出した言葉を心の中で唱えてみるのも効果的です。「私は粘り強い」「私は乗り越える力を持っている」など。これは、自分自身への肯定的なアファメーションとなります。
架空の事例:記憶がもたらした変化
山田さん(仮名、50代、パート勤務)は、子育てが一段落し、これからの人生について漠然とした不安を感じていました。自分には特別な才能もなく、特に誇れることもないと感じていたそうです。ある時、過去の記憶をたどるワークで、10年以上前にパート先で急な欠員が出た際に、未経験の業務を必死に覚え、混乱なく乗り切った時のことを思い出しました。その時、「大変だったけど、自分なりに頑張ってやり遂げたな」と心底ホッとし、自分を褒めたことを鮮明に記憶していました。
この記憶を深掘りした結果、山田さんは「未経験のことでも、状況に合わせて柔軟に対応し、粘り強く努力できる」という自分の強みを再認識しました。そして、当時の「よくやった」という感覚を今の自分にも向け直すようになりました。毎日のパート業務で小さな「できた」を見つけては、「今日の私は、このタスクを時間内に終えられてよくやった」と心の中で自分を褒めるようにしたのです。
この習慣を続けるうちに、山田さんの表情は明るくなり、仕事への取り組み方も積極的になりました。パート先での新しい業務にも挑戦する意欲が湧き、周りからも頼られる存在になったそうです。過去の「よくやった」記憶は、特別なことではなく、日々の地道な努力や困難への立ち向かい方を肯定するものでしたが、それが現在の山田さんの自己肯定感を高め、新しい活力となっていったのです。
まとめ
過去に「よくやった」と自分自身を褒めた温かい記憶は、あなたの内側に確かに存在する宝物です。それは、あなたが自分自身の価値を認め、自分を肯定したかけがえのない瞬間です。この記憶を丁寧にたどり、そこから「自己承認のエキス」を抽出して現在の自分に活かすことで、自己肯定感は内側から豊かに育まれていきます。
特別な成功を待つ必要はありません。日々の小さな頑張りや、自分自身を大切にした瞬間など、あなたの過去の記憶の中に眠る「よくやった」を優しく呼び覚ましてみましょう。そうすることで、あなたは今の自分をより肯定的に捉え、日々の生活に穏やかな活力と前向きなエネルギーを満たすことができるはずです。過去の記憶は、あなたの未来を照らす希望の光となるのです。